商標登録のやり方を初心者向けに徹底解説

「自分のブランド名やロゴを守りたい」と思ったとき、最初にぶつかる壁が商標登録の手続きではないでしょうか。特許庁への出願と聞くと、なんだか難しそうで腰が引けてしまう方も多いかもしれません。
実際に商標登録の手続きに携わってきた経験から申し上げると、全体の流れを理解してしまえば、決して手の届かない手続きではありません。ただし、事前準備を怠ると審査で拒絶されたり、余計な費用がかかったりするケースも少なくないのが現実です。
この記事では、商標登録のやり方を出願前の準備から登録完了まで、できるだけ具体的にお伝えしていきます。
この記事で学べること
- 商標登録は「事前準備→出願→審査→登録」の4ステップで完了する
- 出願方法は3種類あり、オンライン出願なら電子化手数料が不要になる
- 通常審査は8〜10ヶ月だが、早期審査なら約1.8ヶ月で結果が出る
- 出願料は1区分あたり12,000円、登録料は1区分あたり32,900円が目安
- 事前の類似商標検索を怠ると拒絶査定のリスクが大幅に高まる
商標登録の全体像を把握する
商標登録と聞くと複雑なイメージがありますが、大きく分けると4つのステージで構成されています。
まず全体の流れを頭に入れておくことで、各ステップで何をすべきかが明確になります。
この4ステージの中で、特に重要なのがステージ1の事前準備です。ここを丁寧に行うかどうかで、審査がスムーズに進むかどうかが大きく変わってきます。
ステージ1:出願前に必ずやるべき3つの準備

出願書類を作成する前に、しっかりと準備を整えましょう。この段階で手を抜くと、後から大きな手戻りが発生します。
登録する商標の形を決める
まず、どのような形で商標を登録するかを明確にする必要があります。
具体的には、文字商標(漢字・カタカナ・ひらがな・アルファベット)、図形商標(ロゴマーク)、あるいはそれらを組み合わせた結合商標など、さまざまな種類があります。
経験上、初めて商標登録をされる方は「とりあえずロゴも文字もまとめて登録しよう」と考えがちですが、文字とロゴを別々に出願した方が権利範囲が広くなるケースもあります。文字だけの標準文字商標であれば、書体を問わず保護されるため、実務上のメリットが大きいです。
標準文字商標の場合は、10ポイント以上の統一書体、黒色、横一行という書式要件がある点にも注意してください。
類似する商標がないか検索する
出願前の商標検索は、最も重要な準備作業と言っても過言ではありません。
すでに同一・類似の商標が登録されていた場合、出願しても拒絶される可能性が極めて高くなります。特許庁が提供している「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」を使えば、無料で既存の商標を検索できます。
検索する際は、以下のポイントを意識してください。
商標検索で確認すべきポイント
類似商標の判断は専門的な知識が必要な場面も多いため、不安な場合は商標登録検索の詳しい手順を確認しておくことをおすすめします。
指定商品・指定役務と区分を決める
商標登録では、「どの商品やサービスについて商標を使うのか」を指定する必要があります。これを指定商品・指定役務と呼び、国際的に統一されたニース分類に基づいて第1類から第45類までの区分に分けられています。
たとえば、アパレルブランドであれば「第25類(被服)」、飲食店であれば「第43類(飲食物の提供)」といった具合です。
区分の数が増えるほど出願料・登録料ともに上がるため、事業に必要な範囲を見極めることが大切です。
将来的に事業を拡大する予定がある場合は、あらかじめ関連する区分も含めて出願しておくと安心ですが、費用とのバランスを考慮して判断しましょう。
ステージ2:出願書類の作成と3つの提出方法

事前準備が整ったら、いよいよ出願です。商標登録願(出願書類)を作成し、特許庁に提出します。
商標登録願に記載する内容
商標登録願には、以下の情報を記載します。
1. 出願人の氏名または名称(個人の場合は氏名、法人の場合は法人名)
2. 出願人の住所または居所(法人の場合は本店所在地)
3. 商標の表示(登録したい商標そのもの)
4. 指定商品・指定役務(どの区分のどの商品・サービスか)
5. 特許庁長官宛の願書としての宣言文
特許庁のウェブサイトには記載例が公開されていますので、初めての方はそちらを参考にしながら作成するとスムーズです。
3つの出願方法を比較する
商標登録願の提出方法は、大きく分けて3つあります。それぞれの特徴を整理してみましょう。
オンライン出願
特許庁のインターネット出願ソフトを使って電子的に提出。電子化手数料が不要で、現在最も利用されている方法です。
窓口提出
特許庁の出願課(1階)に直接持参。特許印紙を貼付して提出します。電子化手数料が別途発生します。
郵送提出
書類を郵送で特許庁に送付。窓口提出と同様に特許印紙の貼付が必要で、電子化手数料も後日請求されます。
個人的にはオンライン出願をおすすめします。電子化手数料(書面をデータ化するための費用)がかからないだけでなく、提出の記録が電子的に残るため管理も楽です。
ただし、オンライン出願には事前に以下の準備が必要です。
電子証明書の取得(マイナンバーカードに搭載されている電子証明書も利用可能)、ICカードリーダーの準備、特許庁のインターネット出願ソフトのダウンロードとインストール、そして識別番号と電子証明書の登録です。
初期設定にやや手間がかかるため、1回だけの出願であれば紙での提出を選ぶ方もいらっしゃいます。弁理士に依頼する場合は、代理人が電子出願してくれるため、電子化手数料の心配は不要です。
出願にかかる費用
商標登録の費用は、出願時と登録時の2段階で発生します。
商標登録にかかる費用の目安(1区分の場合)
※区分が増えるごとに出願料・登録料がそれぞれ加算されます。登録料は5年分割納付も可能(1区分あたり17,200円)。紙出願の場合は別途電子化手数料(1,200円+700円×書面枚数)が必要です。
弁理士に依頼する場合は、上記に加えて代理人手数料が発生します。事務所によって異なりますが、出願から登録まで含めて5万円〜15万円程度が一般的な相場です。
ステージ3:特許庁での審査の流れ

出願が受理されると、特許庁による審査が始まります。審査は2段階で行われます。
方式審査と実体審査の違い
方式審査とは、提出された書類が形式的な要件を満たしているかどうかを確認する審査です。記載漏れや書式の不備がないかがチェックされます。
方式審査を通過すると、次に実体審査に進みます。こちらが本番の審査です。審査官が、その商標が登録要件を満たしているかどうかを判断します。
実体審査で確認される主なポイントは以下のとおりです。
・他人の登録商標や出願中の商標と類似していないか
・商品やサービスの一般的な名称(普通名称)ではないか
・品質や産地を誤認させるおそれがないか
・公序良俗に反しないか
審査の結果、問題がなければ「登録査定」が出され、問題があれば「拒絶理由通知」が届きます。
審査にかかる期間
通常の審査では、出願から最初の審査結果が届くまでおおよそ8〜10ヶ月かかります。
ただし、すでに商標を使用している場合や使用の準備を進めている場合は、早期審査を申請できます。早期審査が認められると、約1.8ヶ月で審査結果が出るため、大幅な時間短縮が可能です。
早期審査を利用するには、「早期審査に関する事情説明書」を別途提出する必要があります。商標をすでにビジネスで使っている方は、積極的に活用を検討してみてください。
拒絶理由通知を受けた場合の対応
拒絶理由通知が届いても、すぐに諦める必要はありません。
通知に対して「意見書」や「手続補正書」を提出することで、拒絶理由を解消できる場合があります。たとえば、指定商品の記載を修正したり、類似商標との違いを論理的に説明したりすることで、登録に至るケースも珍しくありません。
意見書の提出期限は通常40日(在外者は3ヶ月)ですので、期限内に対応することが重要です。
それでも拒絶査定が出された場合は、「拒絶査定不服審判」を請求して再度判断を求めることもできます。
ステージ4:登録査定後の手続きと商標権の発生
審査を通過し、登録査定を受けたら、あと一歩です。
登録料の納付で商標権が発生する
登録査定の通知が届いてから30日以内に登録料を納付する必要があります。この期限を過ぎると、せっかくの登録査定が無効になってしまいますので十分ご注意ください。
登録料は10年分を一括で納付する方法と、5年ごとに分割して納付する方法があります。
登録料の納付が確認されると、商標原簿に登録され、この時点で正式に商標権が発生します。
なお、出願が公開された時点で、出願人は第三者に対して警告を行うことができます。つまり、登録完了前であっても、一定の保護が受けられる仕組みになっています。
登録後に知っておくべきこと
商標権の存続期間は登録日から10年間です。
ただし、登録商標の権利は更新が可能で、更新登録申請を行えば何度でも10年ずつ延長できます。つまり、適切に管理すれば半永久的にブランドを保護し続けることができるのです。
更新登録申請は、存続期間満了の6ヶ月前から手続きが可能です。うっかり期限を過ぎてしまわないよう、カレンダーに記録しておくことをおすすめします。
自分で出願するか弁理士に依頼するかの判断基準
商標登録は個人でも法人でも自分で手続きできますが、弁理士に依頼するという選択肢もあります。
自分で出願する場合
- 費用を最小限に抑えられる(印紙代のみ)
- 商標制度への理解が深まる
- シンプルな文字商標で1区分のみの場合に向いている
弁理士に依頼する場合
- 類似商標の判断を専門家に任せられる
- 拒絶理由通知への対応がスムーズ
- 複数区分やロゴ商標など複雑な出願に適している
- 紙出願でも電子化手数料が不要になる
出願できる人の要件
商標登録の出願人になれるのは、日本国内に住所を持つ個人、日本の法人(株式会社、合同会社など)、そして一定の要件を満たす外国人です。
一方で、法人格のない団体(任意団体やサークルなど)は出願人になることができません。また、未成年者が出願する場合は法定代理人の同意が必要です。
個人事業主の方は、個人名義で問題なく出願できます。
よくある質問
商標登録は個人でも本当にできますか
はい、個人でも問題なく出願・登録が可能です。日本国内に住所があれば、弁理士を介さずに直接特許庁に出願できます。ただし、類似商標の判断や指定商品の記載など、専門知識が必要な場面もあるため、不安がある場合は弁理士への相談を検討してみてください。
商標登録にかかる期間はどのくらいですか
通常の審査では出願から登録まで約8〜10ヶ月が目安です。ただし、すでに商標を使用している場合は早期審査を申請でき、約1.8ヶ月で結果が出ることもあります。登録査定後は30日以内に登録料を納付すれば、商標権が正式に発生します。
出願が拒絶されたらお金は戻ってきますか
残念ながら、出願料は拒絶された場合でも返還されません。これが事前の類似商標検索を丁寧に行うべき最大の理由です。出願料を無駄にしないためにも、J-PlatPatでの検索や弁理士への事前相談をおすすめします。
ロゴと文字を一緒に登録すべきですか、別々にすべきですか
一般的には、文字とロゴを別々に出願した方が権利範囲が広くなる傾向があります。文字のみの標準文字商標は書体を問わず保護されるため、汎用性が高いです。ただし、別々に出願すると費用は2件分かかるため、予算と保護したい範囲のバランスで判断しましょう。
商標権の更新を忘れた場合はどうなりますか
存続期間満了後6ヶ月以内であれば、割増登録料を支払うことで更新が可能です。ただし、6ヶ月を過ぎると商標権は消滅してしまいます。消滅後に他者が同じ商標を出願・登録してしまう可能性もあるため、更新期限の管理は非常に重要です。スケジュール管理ツールなどでリマインダーを設定しておくことを強くおすすめします。
まとめ
商標登録のやり方を改めて整理すると、事前準備→出願→審査→登録の4ステップです。
特に重要なのは、出願前の類似商標検索と、適切な指定商品・区分の選定です。ここを丁寧に行うことで、審査がスムーズに進み、拒絶されるリスクを大幅に減らすことができます。
費用面では、1区分であれば出願料と登録料を合わせて約44,900円。弁理士に依頼する場合はそれに代理人手数料が加わりますが、専門家のサポートを受けることで手続きの確実性が格段に上がります。
ブランドを守ることは、事業の将来を守ることでもあります。「まだ早いかな」と思っている方も、事業が軌道に乗り始めた段階で、ぜひ商標登録を検討してみてください。