商標登録の費用を区分数別に徹底解説

「商標登録をしたいけど、いったいいくらかかるのだろう」——事業を始めたばかりの方や、新しいブランドを立ち上げようとしている方にとって、これは最初にぶつかる壁ではないでしょうか。
結論からお伝えすると、商標登録の最低費用は29,200円(1区分・5年登録の場合)です。ただし、この金額はあくまで特許庁に支払う印紙代のみ。実際には区分数や登録期間、弁理士への依頼の有無によって、総額は大きく変わってきます。
個人的な経験では、費用の全体像を把握しないまま手続きを始めてしまい、「思ったより高かった」と後悔される方を少なくありません。この記事では、商標登録にかかる費用を出願から更新まで、すべてのフェーズにわたって整理しました。
この記事で学べること
- 商標登録の最低費用は29,200円だが、平均的な出願では約2区分が必要になる
- 5年登録と10年登録では、長期的に見ると10年登録の方が約20%お得になる
- 弁理士に依頼した場合の総費用は1区分で約6〜8万円が相場
- 更新時の特許庁費用は新規登録時より高く設定されている
- 業種別に必要な区分数の目安を知れば、無駄な出費を防げる
商標登録費用の全体像と計算式
商標登録の費用は、大きく分けて2つのタイミングで発生します。
まず「出願時」に支払う出願料。そして審査に通った後に支払う「登録料」です。この2段階構造を理解しておくことが、正確な予算計画の第一歩になります。
出願料の計算式は「3,400円 +(区分数 × 8,600円)」です。
ここで言う「区分」とは、商標を使用する商品やサービスのカテゴリーのことです。たとえば、アパレルブランドが洋服(第25類)だけでなくバッグ(第18類)にも商標を使いたい場合は、2区分での出願が必要になります。
特許庁のデータによると、商標出願の平均区分数は約1.95区分(およそ2区分)です。つまり、多くの事業者が2区分前後で出願しているということになります。
区分数別の出願料(特許庁印紙代)
特許庁に支払う費用の完全内訳

特許庁に支払う費用(印紙代)は法律で定められており、どの弁理士事務所に依頼しても、自分で出願しても金額は変わりません。ここでは出願料と登録料に分けて、具体的な金額を整理します。
出願時にかかる費用
出願料は、出願書類を特許庁に提出するタイミングで支払います。先ほどの計算式に当てはめると、区分数ごとの金額は以下のとおりです。
- 1区分:3,400円 + 8,600円 = 12,000円
- 2区分:3,400円 +(8,600円 × 2)= 20,600円
- 3区分:3,400円 +(8,600円 × 3)= 29,200円
注意していただきたいのは、出願料は審査結果に関わらず返金されないという点です。仮に審査で拒絶されても、この費用は戻ってきません。
登録時にかかる費用(5年と10年の比較)
審査に合格すると、登録料を支払って初めて商標権が発生します。登録期間は5年と10年の2パターンから選択できます。
5年登録
- 1区分:17,200円
- 2区分:34,400円
- 3区分:51,600円
初期費用を抑えたい場合に有効
10年登録
- 1区分:32,900円
- 2区分:65,800円
- 3区分:98,700円
長期的にはこちらがお得(約4%割安)
ここで重要なポイントがあります。5年登録を2回繰り返すと、1区分あたり17,200円 × 2 = 34,400円。対して10年登録は32,900円です。10年間で見ると、10年登録の方が1区分あたり1,500円お得になります。
事業を長期的に続ける見通しがある場合は、10年登録を選ぶ方がコストパフォーマンスは高いと言えるでしょう。
特許庁費用のみの合計額一覧
出願料と登録料を合わせた、特許庁に支払う合計額をまとめます。
特許庁費用の合計(出願料+登録料)
| 区分数 | 出願料 | 5年合計 | 10年合計 |
|---|---|---|---|
| 1区分 | 12,000円 | 29,200円 | 44,900円 |
| 2区分 | 20,600円 | 55,000円 | 86,400円 |
| 3区分 | 29,200円 | 80,800円 | 127,900円 |
弁理士に依頼した場合の費用相場

商標登録は自分で出願することも可能ですが、多くの方が弁理士(特許事務所)に依頼しています。弁理士費用は事務所によって異なりますが、ここでは一般的な相場をご紹介します。
弁理士の手数料の内訳
弁理士に依頼する場合、主に以下の費用が発生します。
出願時の弁理士手数料:
- 基本料金:30,000〜33,000円程度
- 追加区分ごとの加算:11,000〜14,300円程度
区分数別の弁理士手数料目安:
- 1区分:33,000〜45,000円
- 2区分:44,000〜64,600円
- 3区分:55,000〜84,200円
登録時の弁理士手数料:
- 登録手続き(1区分・10年):33,000円程度
これまでの取り組みで感じているのは、弁理士費用は事務所の規模や対応範囲によってかなり幅があるということです。単純に安いところを選ぶのではなく、先行商標調査の精度や、拒絶理由通知への対応力も含めて検討することが大切です。
弁理士依頼時の総費用シミュレーション
特許庁費用と弁理士費用を合わせた、実際の出費総額を見てみましょう。
自分で出願する場合と弁理士に依頼する場合の比較

費用を抑えたい方にとって、「自分で出願する」という選択肢は魅力的に映るかもしれません。ただし、コスト面だけで判断するのはリスクがあります。
自分で出願するメリット
- 弁理士費用が不要で最安29,200円から可能
- 商標制度への理解が深まる
- 自分のペースで手続きを進められる
自分で出願するデメリット
- 先行商標調査の精度に不安が残る
- 拒絶理由通知への対応が難しい
- 区分選択の誤りで保護範囲が不十分になるリスク
よく見かける課題として、自分で出願した方が区分の選択を誤り、本来保護したかった商品・サービスがカバーされていなかったというケースがあります。出願料は返金されないため、やり直しになるとかえって費用がかさんでしまいます。
シンプルな1区分の出願で、類似商標がないことが明らかな場合は自分での出願も選択肢になります。一方、複数区分にまたがる場合や、類似商標の有無が判断しにくい場合は、弁理士への依頼を強くおすすめします。
業種別に必要な区分数の目安
「自分のビジネスには何区分必要なのか」——これは費用を見積もるうえで欠かせない情報です。ここでは代表的な業種ごとの目安をご紹介します。
ECサイト・物販ビジネスの場合
取り扱う商品カテゴリーによって必要な区分が変わります。たとえばアパレルECであれば、衣類(第25類)に加えて、バッグ・アクセサリー(第18類・第14類)、さらにオンラインショップのサービス(第35類)まで含めると3〜4区分が必要になることもあります。
ただし、最初から全区分を取る必要はありません。まずは主力商品の区分から始めて、事業拡大に合わせて追加出願するというアプローチも現実的です。
IT・ソフトウェア企業の場合
ソフトウェアやアプリを提供する場合は、ソフトウェア(第9類)とソフトウェアの提供サービス(第42類)の2区分が基本です。SaaSモデルであれば、第42類だけで対応できるケースもあります。
飲食店・食品メーカーの場合
飲食店であれば飲食サービス(第43類)が中心。自社ブランドの食品も販売するなら、食品(第29類・第30類)を加えて2〜3区分が目安です。
コンサルティング・士業の場合
コンサルティングサービス(第35類)の1区分で対応できることが多い業種です。セミナーや教育事業を展開する場合は、教育(第41類)の追加を検討しましょう。
更新時の費用と見落としがちなコスト
商標登録は一度取得して終わりではありません。商標権を維持するためには、期間満了前に更新手続きが必要です。
更新登録の費用
更新時の特許庁費用は、新規登録時よりも高く設定されている点に注意が必要です。
- 10年更新(1区分):43,600円(新規の32,900円より10,700円高い)
- 5年更新(1区分):22,800円
弁理士に更新手続きを依頼する場合は、別途44,000円程度の手数料がかかります。
その他の管理費用
商標権を保有していると、以下のような場面で追加費用が発生することがあります。
発生しうる追加費用一覧
法人名の変更や本社移転など、事業を続けていれば起こりうる変更にも費用がかかります。特に法人化のタイミングで個人名義から法人名義に変更する場合は、名義変更の手続きが必要になることを覚えておきましょう。
商標登録費用を賢く抑えるポイント
限られた予算の中で最大限の保護を得るために、いくつかの実践的なアプローチをご紹介します。
区分数を最適化する
不必要に多くの区分で出願すると、それだけ費用が膨らみます。まずは現在の事業に直接関係する区分に絞り、将来の事業展開は追加出願で対応するのが賢明です。
1区分減らすだけで、出願料が8,600円、10年登録料が32,900円、合計で41,500円の節約になります。
10年登録を選ぶ
先述のとおり、5年登録を2回繰り返すよりも10年登録の方が割安です。さらに、5年後の更新手続きの手間と弁理士費用も省けるため、長期的なコストメリットは大きいと言えます。
支払いタイミングを把握する
商標登録の費用は一度にすべて支払うわけではありません。
つまり、出願から登録までの間に半年〜1年の猶予があるため、登録料の準備期間を確保できます。資金繰りの観点からも、このタイムラグは事業者にとってありがたい仕組みです。
費用シミュレーション:3つの典型的なケース
最後に、よくあるビジネスパターンごとに、出願から登録までの総費用をシミュレーションしてみます。
ケース1:個人のコンサルタント(1区分・自分で出願)
コンサルティングサービス(第35類)のみで出願する場合です。
- 出願料:12,000円
- 登録料(10年):32,900円
- 弁理士費用:0円
- 合計:44,900円
ケース2:ECサイト運営者(2区分・弁理士依頼)
商品(第25類)とオンライン小売サービス(第35類)の2区分で出願する場合です。
- 出願料:20,600円
- 登録料(10年):65,800円
- 弁理士費用:約44,000円
- 合計:約130,400円
ケース3:IT企業(3区分・弁理士依頼)
ソフトウェア(第9類)、教育サービス(第41類)、SaaS提供(第42類)の3区分で出願する場合です。
- 出願料:29,200円
- 登録料(10年):98,700円
- 弁理士費用:約55,000〜84,200円
- 合計:約183,000〜212,000円
いずれのケースでも、ブランドが模倣された場合の損害と比較すれば、商標登録の費用は「保険料」として十分に妥当な投資と言えます。事業の規模が大きくなるほど、商標を守るコストよりも守らないリスクの方がはるかに大きくなるためです。
よくある質問
商標登録は個人でも法人でも費用は同じですか?
はい、特許庁に支払う印紙代は個人・法人を問わず同額です。弁理士費用についても、多くの事務所で個人・法人の区別なく同一料金を設定しています。ただし、法人化に伴い個人名義から法人名義への変更が必要になった場合は、名義変更の手続き費用(弁理士手数料22,000円程度)が別途かかります。
出願が拒絶された場合、費用は返金されますか?
残念ながら、出願料は審査結果に関わらず返金されません。これが弁理士に先行調査を依頼する大きな理由の一つです。弁理士による事前調査で類似商標の存在が判明すれば、無駄な出願料の支払いを避けることができます。調査費用を含めても、拒絶リスクを減らせるメリットは大きいと言えるでしょう。
5年登録と10年登録、どちらを選ぶべきですか?
長期的に事業を続ける予定であれば、10年登録がおすすめです。10年間のトータルコストで見ると、5年登録を2回行うよりも1区分あたり1,500円安くなります。加えて、5年後の更新手続きの手間や弁理士費用も不要です。一方、試験的なブランドや短期プロジェクトの場合は、5年登録で初期費用を抑えるのも合理的な選択です。
早期審査を利用すると追加費用はかかりますか?
早期審査制度を利用する場合、特許庁への追加の印紙代はかかりません。ただし、弁理士に早期審査の申請を依頼する場合は、33,000円程度の手数料が発生します。通常の審査期間が約6〜12ヶ月のところ、早期審査では約2ヶ月程度に短縮されるケースもあるため、急ぎの場合は検討する価値があります。
商標登録の費用は経費として計上できますか?
はい、事業に関連する商標登録費用は経費として計上できます。出願料や登録料は「租税公課」、弁理士費用は「支払手数料」や「外注費」として処理するのが一般的です。プレスリリースの配信費用などと同様、ブランド構築に関わる正当な事業経費として認められます。なお、商標権は無形固定資産として計上し、10年で減価償却する方法もありますので、税理士に相談されることをおすすめします。
まとめ
商標登録の費用は、最低29,200円(1区分・5年・自分で出願)から、弁理士に依頼して複数区分を取得する場合は20万円前後まで、状況によって大きく異なります。
費用を正しく把握するためのポイントを改めて整理すると、以下のとおりです。
- 費用は「出願時」と「登録時」の2段階で発生する
- 特許庁費用は一律だが、弁理士費用は事務所によって異なる
- 区分数が増えるほど費用は上がるため、必要な区分の見極めが重要
- 長期的には10年登録の方がコストパフォーマンスが高い
- 更新時の費用も含めたトータルコストで計画を立てる
商標は事業の信頼と価値を守る重要な資産です。費用面で不安がある場合も、まずは1区分から始めて、事業の成長に合わせて保護範囲を広げていくというステップを踏めば、無理のない予算で商標権を確保できます。